オー・シザーブルの「仔羊のロースト」/素材を引き出すことに定評のある老舗フレンチの看板料理。オーストラリア産のラム肉を寝かせ、頃合いを見て提供する。味付けは、塩と胡椒、骨から出るフォンだけ。夜のアラカルト4900円(税・サ別。以下同)。昼3500円~、夜7500円~のコースでも味わえる(撮影/写真部・東川哲也)
オー・シザーブルの「仔羊のロースト」/素材を引き出すことに定評のある老舗フレンチの看板料理。オーストラリア産のラム肉を寝かせ、頃合いを見て提供する。味付けは、塩と胡椒、骨から出るフォンだけ。夜のアラカルト4900円(税・サ別。以下同)。昼3500円~、夜7500円~のコースでも味わえる(撮影/写真部・東川哲也)
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 著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、作家の曽野綾子さんが選んだのは、オー・シザーブルの「羊のロースト」だ。

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 現在の在マダガスカル特命全権大使・小笠原一郎氏が、ご赴任の直前、私に現地の状況を訊きたいと言われて、このレストランで初めてお目にかかった。一九八三年以来、私がマダガスカルに何回もでかけていたのは、現地で客死した友人のシスター・遠藤能子(よしこ)さんの業績を書くためであった。

 小笠原大使にお招きいただいたのは、「オー・シザーブル」という洒落たお店で、その場に着いていても、なかなかレストランが見つからない。しかしアルファベットのサインが見えた途端にわかった。フランス語で『六本木』という名前のお店なのである。

 メニューに「仔羊のロースト」があった。こんないい仔羊は、なかなか材料としても手に入らないし、この癖のない優しい焼加減も素人の手に余る。

 羊料理は、昔レバノンに行った時から私の好物になった。アラブの人たちが厳しい荒野で育てた最も上質な味で、私の中で中近東が身近な存在になって以来の貴重なごちそうなのである。

「オー・シザーブル」東京都港区六本木7‐13‐10 宮下ビル1F/営業時間:12:00~13:30L.O.18:00〜22:00L.O./定休日:日

週刊朝日 2016年12月16日号