11年ぶりにザ・ローリング・ストーンズがファン待望のニューアルバム「ブルー&ロンサム」を発売する。50年の歳月をかけて構想された、原点回帰のブルース・アルバムだ。ストーンズ&ブルース通でギタリストの鮎川誠、仲井戸麗市両氏が新作の魅力について熱く語りあった。
──ストーンズとの出会いについて教えて下さい。
鮎川:ストーンズは日本でのデビュー、1964年から聴いていますよ。友達の家で「テル・ミー」を聴いて、魔力があるわけ。クリフ・リチャードとかとはまったく違っていた。彼らのアルバムのライナーノーツを読んで知ったのが、マディ・ウォーターズという名前だった。それがストーンズと、ブルースとの出会い。
仲井戸:俺はビートルズのシングル盤「抱きしめたい」を持っていたけど、学校の同級生だったK君が「それも良いけど、これも良いぜ」と聴かせてくれたのが「リトル・レッド・ルースター」だった。まだブルースなんて聴いたことがなかったし、最初は変な曲だと思ったね(笑)。でも、その後に「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」を聴いて、直撃を受けた。イギリスのバンドが東洋の子供たちにも届いたというのは、本当に凄いよね。
鮎川:まずストーンズを経由してブルースの世界に触れたことで、ブルースを“よく知らない変な音楽”として聴き始めるのではなく、一つの流れとして聴くことが出来たのも良かった。
──新作「ブルー&ロンサム」の印象は?
鮎川:原点のブルースのサウンドが前に出てくるのが痛快ですね。ストーンズが怖い物知らずということは判っているけど、本当に迷いがない。
仲井戸:まずはこういうアルバムを出してくれたことが嬉しい。「やっと出してくれた!」って感じですね。これまでもアルバムで何曲もブルース・カヴァーはやってきたけど、それとは色合いが異なると思う。
鮎川:ストーンズは、ブルースという凄い音楽が存在することを最初に発見したイギリスの若者だと思う。ミック(・ジャガー/ヴォーカル)とキース(・リチャーズ/ギター)が再会したとき、ミックは賢い中学生だったから、アメリカの「チェス・レコーズ」から通販でレコードを手に入れていた。レコードのジャケットを持っておくというのは僕もチャボ(仲井戸さん)もやっていたけど、シンボルなんですよ。俺たちはイケてるぜ、人より先にブルースにのめりこんでるぜって。そしてミックとキースはロバート・ジュニア・ロックウッドの曲にちなんでリトル・ボーイ・ブルー&ザ・ブルー・ボーイズというバンドを結成する。それから50年以上が経っているけど、当時から彼らが何も動いていないという印象を受けました。これこそがロックの始まりだ!というね。
仲井戸:エリック・クラプトンも「フロム・ザ・クレイドル」(1994年)で全曲ブルース・カヴァーをやったけど、それと同じ、少年時代から変わらないスピリットを感じる。ストーンズはブルースやR&Bのコピーから出発して、輝くばかりのオリジナル曲も作って、さまざまなキャリアを経た上で今ブルース・アルバムを作りあげた。カヴァーなんだけど、“ストーンズのブルース”になっているね。