ジャーナリストの田原総一朗氏が、豊洲新市場問題について「あきれるだけでは済まない重大な問題がある」と指摘する。
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9月10日に、小池百合子東京都知事が緊急記者会見で、豊洲新市場の主要建物の下に盛り土がなく、地下空間になっていることを明らかにした。
豊洲新市場の用地は東京ガスの工場跡地で、土壌汚染が問題になっている。そもそも東京ガス側は、土壌汚染があることから、生鮮食品の市場には適さないと、売却に難色を示していたという。それを、なぜ東京都が買おうとしたのかも、いまだ謎のままだが、現在のメディアの関心は盛り土問題に集中している。
東京都が委嘱した専門家会議は、2008年に、市場用地の全体で、地面を2メートル掘り下げて汚染のない土を入れ替え、その上に2.5メートル分の土をあらたに盛るという方針を打ち出した。
しかし、水産仲卸売場棟をはじめとする主要な施設の下には、実際には盛り土がなく、最高で深さ4.5メートルほどの地下空間が設けられていた。どうやら10年11月には、地下空間への方針変更が都庁の中で浮上していたようだ。
それにしても、なぜ、専門家会議の方針が変えられることになったのか。さらに大きな疑問は、なぜ方針の変更があきらかにされず、小池知事が記者発表するまで、盛り土でやっているということになっていたのか、ということである。
盛り土を地下空間に変更したのは、その方針が経費が安かったからだ、とも言われているが、それならば、その理由を示して、なぜ変更したことを公開しなかったのか。公開すると、何か具合の悪いことでもあったのか。
たとえば、09年7月から11年7月まで中央卸売市場の市場長だった岡田至氏は、建物下に盛り土を実施しない工事の発注を決裁したことを認めながら「発注仕様書の決裁はしたが、問題発覚まで盛り土がされていないとは認識していなかった」と釈明しているのである。
まさに無責任そのものである。
私は、盛り土を地下空間に変更したことを公開しなかったのは、公開すると具合が悪いことがあって隠してきたのだととらえていたが、そうではなく盛り土にしようとした部門と地下空間にした部門は別々で、お互いにまったく連携がなく、またまったく関心も持っていない、ということではないのか。組織としてはあきれ果てた組織である。
だが、豊洲新市場をめぐっては、あきれるだけでは済まない重大な問題がある。
豊洲新市場の整備費は、11年には3926億円であったのが、16年3月時点では5884億円に膨らみ、特に建設費は990億円から2752億円と、3倍近くに急増している。都庁側は、人件費や材料費が上がったのだと弁解するが、このような急増の説明にはならない。
さらに、主要施設3棟の建設工事の入札がなんと、いずれも99%台なのである。これはどう見ても、あまりにも不自然であり、談合の疑いが濃厚である。そしていずれかの利権につながるととらえざるを得ない。都庁のブラックボックスに、小池知事がどこまで斬りこめるのか、不安もあるが、期待したい。
※週刊朝日 2016年10月14日号