しかし、それでも核ミサイルの脅威は排除できない。金正恩を暗殺すれば、金正恩による核ミサイル発射命令は阻止できるが、北朝鮮各地に隠された核ミサイルは無傷で残る。その場合、金正恩暗殺に対する報復として、ミサイル部隊の指揮官が核ミサイルを発射する可能性がきわめて高い。しかも現時点で北朝鮮のミサイルはアメリカ本土には届かない。となれば、報復の核ミサイルは在韓、在日米軍に向けられるだろう。
北朝鮮の初核実験から10年、すでに5回の実験を成功させていることを考えると、核弾頭が完成している可能性はかなり高い。
日本は北朝鮮が核ミサイルを実戦配備しているとの前提で、防衛システムを再検討しなければならなくなったのである。
では、現時点で北朝鮮は、どれほどの核ミサイルを日本本土に撃つことができるのか?
日本を射程に収める弾道ミサイルは「スカッドER」(西日本のみ)、「ノドン」「ムスダン」「テポドン2改」「KN-11」。
うちテポドン2改は発射場組み立て式で、有事には容易に破壊されるため、軍事用のミサイルとしてはほとんど価値がない。
KN-11は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)だが、まだ試験段階で、とくに潜水艦の運用までは時間がかかる。
「つまり、現時点で日本が警戒すべきは他のミサイルです。ノドンは推定で200発、自走発射機が30~50両、ムスダンはミサイル数も発射機ももっと少なく、おそらく10発以下でしょう。スカッドERの数は不明です」(防衛省関係者)
他方、核爆弾については、米研究機関「ISIS」(科学国際安全保障研究所)によると、北朝鮮が現在保有している核爆弾は、プルトニウム型が推定で12~20発という。
「他に濃縮ウラン型の核爆弾が完成している可能性もありますが、おそらく、あるとしてもまだ数発程度でしょう。現時点で北朝鮮が日本を核攻撃しようとするなら、二十数発をノドンなどで一斉に撃ち込むことは可能です。ただ、平時にいきなり日本を核攻撃するということは考えられない。朝鮮半島で有事となった場合になりますが、そのときはもう米韓軍と交戦しているはずなので、二十数発の核ミサイルがすべて生き残っている可能性は少ない。現実的には数発の核ミサイルが日本に飛んでくることになる」(同前)
この数発は、北朝鮮が核弾頭を今後増産していけば、もちろん増えていく。
では、核ミサイルで攻撃された場合、自衛隊は日本を守れるのか?