新国立競技場、築地市場に続き“第3の移転問題”が本誌の取材でわかった。東京都立広尾病院で移転計画が突如、持ち上がり、3月に用地買収の予算370億円が計上された。だが、現場の医師らは「経過が不透明」と猛反発。疑惑の“核心”には前都知事の独断があった。
小池百合子新東京都知事が築地市場移転の延期を表明した8月31日、都庁の第一本庁舎25階の114会議室では医療専門家ら約15人が集められていた。会議の名称は「第1回首都災害医療センター(仮称)基本構想検討委員会」。
だが、2時間にも及んだ論議の中で、首都災害医療センター構想についてほとんど言及されぬまま、会議は途中から紛糾。出席者が口々に疑問を呈したのは、今年3月に370億円もの用地買収の予算がついた広尾病院(渋谷区)の移転計画の不透明さだった。
同席した都の病院経営本部幹部によると、医師会幹部を含む医師らが堰を切ったように「なぜ、広尾病院を青山へ移転する必要があるのか」「なぜ、事前に私たち医師には知らされなかったのか」「新しい病院の基本構想を話し合うより、まず不透明な経緯をきちんと説明してほしい」と相次いで意見を述べたのだ。
「広尾病院の移転計画は、これまでメディアでほとんど報じられていません。ですが、築地市場の豊洲移転問題と根っこは同じです。都は昨夏、広尾病院を現地で改築する方向で動いていたのに、秋に急きょ、2023年に移転すると方針転換。1月には16年度予算原案に用地買収費として370億円を強引にねじ込んだ。築地移転に続く、第2の爆弾となる可能性がある」(東京都の病院経営者)
本誌が入手した内部資料などによると、昨年5月、都はみずほ情報総研に「広尾病院の改修・改築のあり方に関する調査業務」を業務委託。その結果は「現地改築が合理的」という意見だったという。
ところが、5カ月後の10月、今度は伊藤喜三郎建築研究所に「広尾病院整備に係る調査業務」を委託。その内容は「改築の実現性を検討するとともに、他の候補地への移転可能性についても検討し、基本構想を策定する」と変貌していた。