心臓の筋肉がダメージを受け、血液が全身にまわらない重い症状。患者は血流が悪くなって持病の痔が悪化し、肛門の周囲に膿がたまった。石見医師は毎日、患者の妻と一緒に傷口を洗浄するなどの処置をしたが、最終的に感染症を起こして亡くなった。

「毎日、毎日、おしりを洗って、専門外の合併症も早期に発見して。全身を管理できていた実感がありました」(石見医師)

 結末は残念だった、これは現代医療の限界。そう思ったが、家族の思いは違っていたという。

「『先生、よく診てくれたけど、最後は対応が遅れましたよね』と言われました。人の死は大きな出来事です。最後は誰かのせいにしたくなる気持ちはわかりますが、その一言を聞いて悲しい思いをしたことは今でも覚えています」(同)

 人としての礼儀、何より“思いやり”がなければ、信頼関係を築けない。最後は人、なのである。

週刊朝日 2016年9月2日号