映画「男はつらいよ」で寅さんを演じた渥美清さんが亡くなって今年で20年。渥美清の足跡を数々の秘蔵写真とエピソードで辿った「渥美清没後20年 寅さんの向こうに(週刊朝日MOOK)」も好評で今なお、その人気は衰えないが、命日の8月4日、東京・築地の劇場「東劇」で、シリーズ1作目の記念上映会が開かれた。上映前のトークイベントには山田洋次監督、倍賞千恵子さん、前田吟さん、佐藤蛾次郎さんら“山田組”が再び集まり、思い出を語り合った。
「会社には反対されたんですよ」
山田監督は冒頭、映画化する際の逸話を明かした。松竹の反対を押し切って制作したが、試写室にはまったく笑いが起きなかったという。
「なんだこの映画。ちっとも可笑(おか)しくない。僕も落ち込んだし、会社も絶望したんじゃないですか(笑)」
ところが、封切られて間もなく、自宅にプロデューサーから電話が入る。
「おいっ、(客が)入ってるぞっ」
小田急線に飛び乗り、新宿の映画館へ駆けつけてみると、館内は観客の笑い声で揺れていた。
「驚いたね。その時のことは一生忘れないなぁ」
山田監督は思い返した。
「男はつらいよ」シリーズは1968年のテレビドラマからスタートし、翌年映画化。「男はつらいよ 寅次郎 紅(くれない)の花」(95年)までの全48作は、世界に類のない長寿シリーズとしてギネス世界記録にも登録されている。
48作すべてに出演し、「さくら」と「博」としてファンに親しまれた倍賞さんと前田さんは、シリーズ初期のころのエピソードを披露した。