懸命に頑張る球児はもちろん、夏の甲子園といえば、アルプススタンドの吹奏楽部も楽しみのひとつ。『高校野球を100倍楽しむブラバン甲子園大研究』(文藝春秋)を出版した、高校野球ブラバン応援研究家の梅津有希子さんがその意外なマメ知識を伝える。
バリエーション豊かなブラスバンド応援だが、目玉はもちろん楽曲。毎年、必ず耳にする曲といえば「アフリカン・シンフォニー」。もとはアメリカでディスコミュージックとして発表された曲だが、日本では「高校野球の曲」と言われても納得できるほど、甲子園での演奏率は高い。曲名は知らずとも、聞けば「ああ、この曲か!」となる。
「サウスポー」「狙いうち」「ルパン三世のテーマ」「タッチ」──。甲子園では多くの定番曲が流れる。懐メロが応援に使われ続けるのはなぜか。そのルーツは大学野球にあるらしい。
「明治大学が、OBである阿久悠さんが作詞した『狙いうち』を野球応援に使うようになったんです。それが高校野球の応援に波及し、歌謡曲やアニメソングにまで広がりました」
梅津さんによれば、吹奏楽部の演奏は球児のリクエストが大きいという。「憧れの先輩がホームランを打った曲で打席に立ちたい」。そんな球児の思いで懐メロは応援曲として定番化したそうだ。同様に「あの強豪校の応援曲をうちでも!」と、学校間で広まり、“まねし、まねされ”の文化があるのだ。
もちろん受け継がれてきた伝統曲を長年演奏する高校もある。
「横浜高校は40年以上応援スタイルが変わっていません。軍歌調の曲で選手たちを鼓舞するんです」
今年の神奈川大会の決勝(横浜対慶応)を球場で観戦した梅津さんは、横浜の応援に圧倒されたという。
「それはもう地鳴りのようでした。男子校ですから『横高!』の野太い掛け声は迫力満点。駆けつけるOBも含め“男くさい”硬派な応援は圧巻です」
奈良代表の智弁学園も伝統的な応援曲で有名だ。
「兄弟校の智弁和歌山の『ジョックロック』は高校野球ファンの間では“魔曲”と呼ばれています。流れると打線が爆発したり、大逆転したり、幾度となく試合の流れを変えてきたこの曲を智弁学園も演奏するはずなので注目ですよ」
梅津さんは“オリジナル曲推し”だという。その魅力はどこにあるのか。