なんせ文字通り、テレビ界の生き字引。置物のようにスタジオに鎮座する徹子は、ロココ調のドレスにまばゆい宝石で、もうこれ、ほとんど祭壇状態だ。そこで紹介される秘話の数々は、「アラン・ドロンにジュテームされた」(徹子「あまり趣味じゃなかった」)、(杉良太郎いわく)「初めて見た時オードリー・ヘップバーンかと思った」、「なぜかジャニー喜多川結婚スクープがあった」と、いつのまにかテレビ史じゃないから、これ、めくるめく徹子モテモテ史だから。

 なんだろう、この祭壇に全力でお供えしてる感じ。抜かりないぞ、テレ朝。

 内田裕也と樹木希林とのスタジオトークコーナーも、「もしも魔物が現れても、徹子を置いておけば結界として機能します」という民俗学的証明の場面としか思えない。実際この結界、ものすごく機能していて、真っ赤な顔して孫の話をする内田裕也は、一度も「ロックンロール!」と叫ばなかったよ。

 裕也と希林と徹子が並ぶ納涼画面は、ぽっかりと開いた異界への入り口が見えるようで。そして「テレビ界の座敷わらし」徹子がいなくなる時、それはテレビの終わりを見届ける時のような気もして。

週刊朝日 2016年8月5日号

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