一時、都知事選出馬が報じられた元経産官僚の古賀茂明氏が真相を語った──。
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7月11日、民進党東京都連から私に出馬要請がありましたが、その翌日には一転して鳥越俊太郎氏が出馬することになりました。
実は鳥越氏には関係者が前週に出馬を打診し、断られていた。その後、都連は私を擁立する方針に決まり、11日にようやく、松原仁都連会長から「古賀さんでいくから」と電話がありました。その日夕方、私は正式に出馬要請を受けましたが即答せず、「宇都宮健児さんや上杉隆さんも出馬するし、よく話し合ってみんなの政策を取り入れた候補にまとまればいいですね」と答えました。
さっそく徹夜で政策の準備をしなければと思っていたのですが、夜に江田憲司議員から「岡田克也代表が会いたがっている」と話があり、帝国ホテルのスイートルームに呼ばれました。実はこの間、民進党本部に鳥越氏から「ぜひ出馬したい」と打診があったと聞いていました。岡田氏は他の話を始めましたが、私が「鳥越さんが出るという話があるんですか」と尋ねると、岡田氏は「そうです」と答えました。私が「鳥越さんにすればいいじゃないですか」と言い、この時点で候補者は事実上、鳥越氏に決まりました。会談直後に松原氏に電話すると驚いていましたが、私は決して無理に降ろされたのではありません。前週には「鳥越さんが出るなら応援します」と約束もしていたんです。
ただ、少し心配もあります。野党も市民連合も共闘が手段から目的になってしまい、肝心の政策を煮詰めていない。逆に、共闘を崩さないために政策の話を避ける空気すら出てきている。これでは本末転倒です。政策なしで鳥越支援と言うわけにはいかない。宇都宮氏が出馬を取りやめた経緯も不透明で、鳥越氏が宇都宮氏の政策を引き継ぐのかもはっきりしません。市民の前で政策の議論をして、統一候補を決めるべきだったのではないか。政党の都合ではない、市民主導の都知事選が求められていることを忘れてはなりません。
民進党の岡田代表と古賀氏の出馬話はタッチの差で立ち消えとなった。(本誌・小泉耕平、上田耕司、牧野めぐみ/今西憲之)
※週刊朝日 2016年7月29日号