認知症については、どのような原因で発症するのか解明されておらず、有力な仮説として「Aβ」と「タウ」というたんぱく質が発症に関係していると言われている。仮説では、症状が現れる10~20年前からAβが脳内にたまり、その後、タウがたまると神経細胞が死に、脳が萎縮すると考えられている。
そのAβ仮説をベースにした薬が抗Aβ抗体だ。これは脳内に蓄積したAβを取り除く作用がある。バイオジェン・ジャパンによると、この新薬は、健康な高齢者から採取した免疫細胞から、塊となったAβに最も強く結合する抗体を産生する免疫細胞を選び出し、その遺伝子を用いて作られたバイオ医薬品。月に1回投与する注射薬(点滴静注製剤)だ。
中村医師によると、この10年間、Aβ仮説にもとづいて新薬の開発や研究がおこなわれていたが、いずれも失敗に終わり、「Aβ仮説自体が間違いだったのでは」とささやかれていたという。
「Aβ仮説による開発を進めたアデュカヌマブの試験結果により、Aβ仮説の支持という風の吹き戻しが起きつつあります」(中村医師)
※週刊朝日 2016年7月22日号より抜粋