76年になると大口の土地譲渡への課税が引き上げられ、土地長者は減って経営者が復権しました。躍進したのは4位のダイエーの中内功。小さな薬局から事業を興し、安さを武器にスーパー事業を広げ、流通革命の旗手と呼ばれました。

 しかし、ダイエーは90年代以降に業績が低迷し、中内は2001年に退任を余儀なくされます。

■80年代 バブルの転機

 80年代から90年代前半は、経済停滞から脱却し、バブル経済に入った転換期。

 と同時に、長者番付も転機を迎えました。高額所得者の公表方法が83年から変わったのです。それまでの公表対象は「申告所得額1千万円超」でしたが、「所得税額1千万円超」に。給与所得者や個人事業主の場合、納税額は所得額の3~7割ほど。公表金額はそれまでより小さくなり、公表人数も激減しました。

 84年で目を引くのが、8位の作家・赤川次郎。「三毛ホームズ」シリーズ、『セーラー服と機関銃』などのヒット作を飛ばし、経営者と肩を並べてのランク入りです。80年代後半は地価が高騰し、土地売買による上位入りも目立ちました。

■90年代 70億円納税も

 90年代、バブル経済崩壊後の「失われた20年」が始まりました。

 92年のトップは、戦後最大の贈収賄事件にかかわったリクルート前会長の江副浩正。会長辞任後に保有株を売却した利益で、納税額が一気に膨らみました。

 93年の武富士、96年の関西クレジット、98年のレイクなど、90年代は消費者金融のトップが続々と1位に。レイク元会長の浜田武雄の納税額は約70億円で、税額公表を始めた83年以降で最大でした。

 96年の4位に、作曲家の小室哲哉。「小室ファミリー」としてヒットを連発し、CDなどの印税を増やしました。同じ年の8位は、任天堂創業者の山内溥。花札などの玩具メーカーを、世界的なゲーム企業に育てました。97年のトップの斉藤一人など、健康食品会社の経営者が番付の上位入りしたことも、この時代の特徴です。

■ラストはサラリーマン

 2000年代になると、今も一線に立つトップの名が出てきます。00年は2位が楽天社長の三木谷浩史、3位がソフトバンク社長の孫正義。さらに、04年の3位は、ユニクロを運営するファーストリテイリング会長の柳井正でした。

 個人情報保護への意識が高まり、高額納税者の公表は04年を最後に廃止されました。04年の1位は、投資顧問会社の運用部長、清原達郎。サラリーマンが最初で最後のトップに輝き、話題を集めました。

週刊朝日  2016年7月15日号より抜粋

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