定年退職後の男性にしても清原氏にしても、イメージに沿って懸命に努力したはずが、その末路があまりにも寂しい。ただ、男性個人の問題と片づけてしまうと、社会的な損失もある。田中氏はこう続ける。

「社員を使い倒すような会社には入社希望者が減り、対策を講じざるを得ない状況になっています。少子化でこれからは質のいい人材を取り合う時代。『女性活用』というのは男性中心だった日本の遅れた認識で、世界と比べても何周も遅れている。女性に限らず、誰もが気持ちよく働ける環境をどれだけ提供できるかが問われている」

 社会の認識、企業の姿勢がぜひ変わってほしいものだが、個人のレベルではどうすればいいのか。田中氏が勧めるのは「会社以外の価値観に触れること」だ。例えば、子育て世代であれば多様な業種や年代の「パパ友」づくりや、趣味を通じた仲間づくりだ。この点、前出の海原医師も旧友との交流を再開するのが効果的とし「つながりが大変重要。例えば毎月第2水曜日に居酒屋で会う約束をする。行ける人だけが行き、キャンセルもOK。友人を連れていってもいいという機会をつくるのがお勧め」。一方で勤務する会社内では「欲張らないこと。同僚は潜在的にライバル関係にある。とくにリストラも横行する今は注意。1人か2人、信頼できる関係ができれば及第点です」とする。

 さらに日々のちょっとした心がけでも変わる。海原医師は「今は脳や心が体を左右するとよく言いますが、体を味方につけることがすごい大事。背筋をピンと伸ばすと落ち込めなくなるし、目線もうつむくと余計に他人の目が気になるもの。目線は真っ直ぐに」。

週刊朝日  2016年5月20日号より抜粋

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