週刊朝日2016年1月29日号 表紙の菅田将暉さん

 あんな立派な眉毛をしているのに涼しげな顔。力は入ってないけどダルそうでもない佇まい。男らしさ全開でもなければ女っぽくもないのに、だからといって中性的でもない。清潔感はあるけど1週間ぐらいパンツ替えてなさそう。この掴みどころや制約のない、究極のどっちつかず。そりゃ、鬼になろうが高校生になろうがチンピラになろうが総理大臣になろうが、無敵なはずです。

 ここ20年以上、「今どきの若者」と言えば、木村拓哉の独壇場でした。そしてキムタクが若者でなくなった今もなお、“キムタク的要素”は、間違いなく若者を象(かたど)る上でメジャーな項目です。呪縛といってもいいぐらい、日本はキムタクに支配されてきました。しかし菅田将暉には、そんな「キムタク的若者像」にすら、ペロッと舌を出してしまうような身軽さを感じるのです。

 木村さん御本人が、そして日本中が、必死になって意識し守り続けてきた「キムタク」という概念に、もはや何の思い入れもないのが分かります。ちょっぴり寂しいけれど、ついにこの時が来てしまった……。

 アイドルは、世代や時代を無情なほどに突きつけます。そして、それはいつも一瞬の出来事です。菅田クンも来年の今頃には、ただの「イイ役者」になってしまっている可能性大です。彼を許すことは、私たちが今という時を精一杯生きている証しなのです。

週刊朝日  2016年5月20日号

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