08年に最優秀賞を受賞した女性スタッフは、もともと人一倍仕事が遅くて、リストラ候補のひとりだった。しかし、覆面調査で彼女の仕事ぶりは人が見ていないところで手を抜かない丁寧な“おもてなし”であることがわかり、それが評価された。店長は女性を、店のスタッフを指導する教育係に抜擢。すると、“おもてなし”が浸透し、3カ月で売り上げを161%伸ばすことができたという。また、住友生命では12年に、「ほめ方」の研修を受けた管理職が、積極的に部下をほめることで、1人当たりの月間平均契約件数が1.97件から3.54件に増加。
「ほめることがないというときでもエピソードで思い出す。『あのとき一生懸命頑張ってくれた』『ありがたかった』というエピソードをひとつでも思い出せばほめられます」(西村氏)
やる気にスイッチを入れられればいいが、それ以前に「ゆとり世代」とどう向き合ったらいいのか悩む管理職が多いという。
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会(東京都港区)が、昨年3月、全国の社会人の男女約400人を対象に「社会人の『怒り』に関するアンケート調査」を実施したところ、新入社員に対して、最も怒りを覚えた行為は「勤務態度」(81.4%)。やる気が感じられなかったり、間違えても「すみません」の一言もない。遅刻はする、出社しても「おはようございます」の挨拶がない、タメ口で会話をしてくる等々──。
「40代半ば以降の管理職世代と、20代との間は大きな“断絶”があります。仕事を円滑に進めるためにも、断絶を克服しなければなりません」
こう語るのは、『怒りに負ける人 怒りを生かす人』(朝日新聞出版)の著者で、同協会代表理事の安藤俊介氏。管理職世代は、昭和の働き方を知っているので、上司が飲みに誘えば従うのが当たり前。厳しい上下関係のなかで、ときには「ばかやろう!」と怒鳴られながら仕事を覚えてきた。
ところが今の20代は、生活環境や価値観からして違う。飲みに誘っても「今日は用がありますので」と断ってくる。SNSで休むことを伝えてくるなど常識外れのこともお構いなし。かつて自分が上司に怒られたときのように部下に接したくても、「叱れない」「どう接したらいいのかわからない」という人が増えているそうだ。
「怒ることで人間関係を悪くしたくない。また、最近は叱ったことで『パワハラ』と訴えられるケースもあります。しかし、仕事中には注意しなければならない場面があります。自分のなかに『怒り』をため込みすぎるとメンタルの不調にもつながるので、注意が必要です」(安藤氏)
そんなとき役に立つのが、「イライラワードを言い換える」ワザ。
「感情のおもむくままにイライラワードを言ってはいけません。同じ内容でも、言い換えて伝えたほうが相手の心に届きますし、“断絶”を解消することができます」(安藤氏)
※週刊朝日 2016年5月20日号より抜粋