作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。立て続けに2人から「恋愛相談」を受けたという北原氏。嬉しかったのだが、その内容が酷似していたことに驚いたという。
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春だから?「恋愛相談」というものを、立て続けに二人から受けた。嬉しかった。「どうせ北原に恋の話なんてわかるまい」と思わないでいてくれるだけで有り難く、はいはいはい、聞きますよぉ、と身を乗り出して受けた。どちらも不倫で、そしてとても似ていた。というか、同じ、だった。
女はだいたい30代前半。相手は、出会い系で知り合っただいたい40代前半。最初は妻子がいることは知らなかったが、絶対に宿泊しないので問い詰めたところ、子供がいると告白された。「だったら別れる」と言えば、「妻とは家庭内別居状態。ただ子供には責任がある」と泣きつかれた。「近いうちに妻とは別れる」とも言われ、その気になったが、いっこうに別れる気配はない。それどころか隠しごとがなくなりリラックスしたのか、子供の動画を楽しそうに見せてくるわ、ペットの写真を見せてくるわ、妻への愚痴をこぼすわ……オープンになりすぎた。あまりにフツーに家族の写真を見せるので、彼女もつい「かわいい~」なんて微笑んでしまうらしい。
とはいえ、数カ月前に彼の前で泣いたところ、「一緒に俺の実家に行こう」と、実家に連れていってもらえたそうだ(←これも、どっかで聞いたような話)。もちろん親には「会社の部下」と数分紹介されただけで、夜は彼女だけ近所のビジネスホテル泊……。
それにしても、どういうこと? 芸能人の不倫報道で、女性が男の実家に行ったことが報じられていたけれど、それって珍しくないの? 不倫男の個人情報公開、いったい何のため?
そこで私は20代~30代前半の不倫経験女性数人に話を聞いた(男だけが既婚者の不倫に限定すると、結果的にこの世代になるのです)。すると本当に驚くほど、男たちは自分のことをペラペラと話すらしいのだ。私が「不倫は秘め事なのでは……」と絶句すると、20代に「昔のことは知りません」と言われた。ある30代は「既婚男性は愛人に性的刺激と同時に、母親的愛を求めるケースが多いですね」と名言を吐いた。彼女曰く、男たちにとって不倫相手は、母に守られた少年時代や、恋心と性欲に振り回された青年時代、つまりは「失われた俺」を補完してくれる相手なのだと。母は息子を裏切らないしね。そしていざとなれば「法的に(妻から)訴えられるのは残念ながら君」「社会的に傷になるのは女の君」と脅すらしい。現代不倫、どこまでゲスなの~。
ゲスな恋に振り回されると、心すり減る、時間なくなる。失われた俺より、失われた時の方がよほど無念です。心癒やして、胸張って前に進んで! ゲスに傷つく女たち!
※週刊朝日 2016年5月20日号
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