青山:とんでもない勘違いをしていたわけです(笑)。

林:あのころみんな勘違いしてましたよ(笑)。糸井重里さんが「1行1千万円」とか言われていて。学歴は問われないし、女の人にはモテるし、原宿のセントラルアパートに住んでたりして、みんな憧れました。

青山:コピーライター全盛時代でしたよね。僕、糸井さんの林さん評を拝見したことがありまして、ふつう、コピーライターの作業は「削って削って」というものなのに、林さんの場合は「足して足して」だと。

林:そう。どんどん長くなっていくんですよ。コピーライターって特別な才能がいることに、やってみてすぐに気づくんです。

青山:僕が会社に入ったとき、先輩から「ヒートポンプエアコンはなぜ冷暖房ができるのか、15字25行375字で書け」という問題を出されたんです。でも、無駄を削っただけじゃ375字におさまらない。普遍化や適切な比喩が必要なんです。とうとう降参しました。日本人だから日本語が書けるわけじゃないと、そこでたたき込まれたんです。その上、コピーはコンセプトが的確でなければならない。最初にのぞく窓が間違っていたらどうにもならないから、あっちからもこっちからものぞいてみる。さらに最初の1行で客をつかんで最後まで読ませなくてはならない。僕はもしコピーライターをやってなかったら、そもそも文章なんて書いてなかったと思うんです。

週刊朝日  2016年5月6-13日号より抜粋

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