「認知症の方でしたが、女性ヘルパーが車椅子からベッドに移乗(位置を移す)介助をするたびに、ヘルパーのお尻や胸を強く触ったんです。それを注意しても直すことができず、ご家族を呼んで説明してお引き取り願いました」
家族の反応は「まさか、お父さんに限って」というものだったという。
「娘さんがぽろぽろ泣いていました。私の約30年の現場体験では、もともと厳格な人ほど性に関心を持つ気がします。自慰もそうです」
施設長が目撃した例では、尿を採るためのカテーテルを尿道に入れたまま陰部をしごいて、血だらけになった男性がいた。同施設の女性ケアマネジャー(41)も体験を話す。
「夜勤をしていたとき、認知症の方が廊下から事務所にいる私を見ながら、右手を動かして自慰行為をしていました。廊下に精液がまき散らしてあったので、『自分で拭いてください』とティッシュをお渡ししました」
彼女は4人部屋の女性入居者が足を宙に浮かせてしている“最中”も見たという。施設長は言う。
「介護ですべき排泄処理には、便や尿だけでなく、精液やおりものも入っている。自慰は生理現象なので注意できません。ただ、興奮とともに発作が起きたりするリスクがある場合は、ご家族に伝えます。『えーっ、施設でそんなことしてたんですか?』って、驚かれることが多いですね」
家族にあまり気づかれないのは、それが夜に行われることが多いからだ。
「ヘルパーにもそれをすんなり受け入れられる人と、受け入れにくい人がいる。人生経験や恋愛経験なども影響しますね。若い女性ヘルパーが70代の方の勃起や精液まみれのオムツを見ると、ショックを受けやすい」
この施設ではつい最近も夜中になると素っ裸になる利用者が出現し、「私は対応できない」と若い女性ヘルパーがべそをかいたという。
こんな例もある。『熟年恋愛講座』など高齢社会の性についての著書も多いジャーナリストの小林照幸さんは、九州のある老人施設で、寝たきりの女性の胸を触る男性入居者に性具を渡した例を取材した。