最大野党の民進党。しかし、作家の室井佑月氏は、そこには与党との連立を狙う人たちのいることが透けて見えるという。

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 4月3日のNHK「日曜討論」は、贔屓(ひいき)にしている山本太郎ちゃんの活躍を見たいがためつけていたが、ほかにも面白いところがあった。

 民進党の岡田代表と、自民党の高村副総裁の小競り合いだ。

 安保関連法は違憲か合憲かというところから、国会で安保関連法廃止法案を話し合うべきか、そうしなくてもいいのか、という流れになり、最後は「嘘つき!」「嘘ついてないもん!」みたいな言い争いとなった。

岡田「安倍首相は法律が成立したとき、『国民にこれからも丁寧に説明していく』と言ったが全く説明していない」

高村「しています」

岡田「(廃止)法案審議のなかで説明すればいい」

高村「我々はずっと説明して回っている」

 この後、司会者に振られて、共産党の志位委員長が、さきほどの岡田さんの話を、もっと丁寧に述べた。

 すると、いきなり高村さんが奇妙なことを言い出したのだ。

「2週間ぐらい前に自民党の国会対策委員会(の関係者)に『(廃止法案を)審議するの』と聞いたが、日本共産党からは『審議しろ』という話があるが、当時の民主党からは一度もない。ましてや、一部の民主党議員は『審議しないでくれ』とまで言ってきている」と。

 もちろん、岡田さんは怒った。ファイアー!

 
岡田「そんな失礼な話はない。取り消せ!」

高村「取り消さない」

岡田「(根拠を)明確にしろ」

高村「明確にしてもいい」

 と、ここでまた共産党の志位さんが岡田さんのサポートに出た。

志位「事実関係として(衆院)議運委員会の場で、民進党も共産党も共同して(審議すべきだと)要求している。これが事実だ」

 それから、公明党の山口さんが話を振られ、国際的なことを考えるとうんぬんと通り一遍の話をする。が、その後、おおさか維新の片山共同代表に話が振られ、彼は安保関連法廃止法案についてもっと審議をしたほうがいいとしながら、

「いろんな人から『どうも与党も野党もやりたくないらしい』といううわさが流れている」

 と話を蒸し返したのだった。

 番組を見ているあたしは思ったね。案外、民進党の岡田さんと共産党の志位さんは協力ができている。でも、野党の中には、あわよくば今の与党との連立狙いが透けて見えたりするところもある。そして、いちばんヤバいのは、最大野党の民進党の中にも、そういう者がいるってこと。

 この番組を利用し、岡田さんは高村さんに詰め寄って、犯人探しをすべきじゃないか。高村さんが「明確にしてもいい」といっているのだし。ここで動かないと、民進党自体が安保関連法廃止法案についてこれ以上、ほんとうは審議したくないようだ、そう思う人も出てくるだろうね。

 そうそう、太郎ちゃんは今回も安定した素晴らしい活躍でした。天晴(あっぱ)れ!

週刊朝日 2016年4月29日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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