「エンターテインメント・ビジネスに身を置く者として、様々な役を演じる機会をもらってきた。出演作は全くのエンターテインメントである場合もあるし、文化の境界線を押し広げるような役であったりする。この事件については聞いて知っていたが、脚本を初めて読んだとき、今再度語るべきときがきたんだと感じた。文化的にそんな時期にきていると思ったんだ。新しいローマ法王に代わり、カトリック教会の物の見方も変わりつつある。今こそ映画が啓蒙的な媒体として機能する時期ではないかと思ったんだ。本作に出演できたことを非常に光栄に思っている。こういった役がまわってくる機会はまれだし、こういった映画が制作されること自体がまれであると思う。台詞によって問題を提起し、警告できる瞬間だと思ったんだよ」
反戦運動やシェール採掘のフラッキング反対運動にも参加し、民主党支持者としての発言もはばからないラファロ。またジャーナリズムに対しても、個人的に深い思い入れがあると言う。
「僕は常にプレスに対して好意的な気持ちを抱いてきた。僕はニュース・ジャンキーって言えるかな。ジャーナリズムによって救われた体験をしたこともある。人があまり耳にしたがらないようなテーマを追求する人たちがいるのは重要なことだと思う。スポットライトのチームのように。そういったジャーナリストを常に高く評価してきたんだ」
だからこそ、役づくりのために、マイク・レゼンデスとウォルター・ロビンソンの仕事場に足を運び、彼らを徹底的に観察した。
「今回マイクとウォルターと仕事をする機会をもらい、ボストン・グローブのスポットライト・チームと知り合い、彼らの深い献身に心打たれたよ。また演じ方によってはこの役は誤解を生む危険をはらんだ仕事であるということも十分わかった。レゼンデスを演じる場合、ヒューマニティーが大切だと感じた。彼のこの問題に対する妥協を許さない姿勢がそれを物語っていると思う。人間というのは空間を与えないと心を開いてこないんだと発見した」(ラファロ)。(ライター・高野裕子)
※週刊朝日 2016年4月22日号より抜粋