
危機的状況にある、雑誌、新聞など活字メディアを勇気づける映画が今年、アカデミー賞作品賞と脚本賞を射止めた。受賞作「スポットライト 世紀のスクープ」(15日公開)は、14年前の、米国の地方紙「ボストン・グローブ」の小さな取材班の調査報道をクローズアップした話題作だ。
「ボストン・グローブ」紙に結成された取材班“スポットライト”は、30年も続いていたカトリック教会の神父による子供への性的虐待と教会側による隠蔽(いんぺい)の事実を念入りなリサーチと精力的な聞き込み調査により、暴露した。
映画はその経過をひもとき、一瞬一瞬を息をのみながら追う展開になっている。新聞記者の地道な業績に目を向け、活字文化の底力を再認識させられる作品だ。
当時の“スポットライト”の中核にいたのが、同紙のウォルター・ロビンソンという伝説の記者だ。ロビンソンはこの事件をテーマとした映画が制作されることを初めて知ったときの気持ちについて語ってくれた。
「本当に意表を突かれた感じでびっくりした。確かに僕らが告発した事件は非常に重要なことだったと思っているが、僕らがいかにそれをやったかについて興味を示してくれる人がいるなんて想像もしていなかったからね。映画を作るに値する内容があるんだ、と映画制作の関係者に説得されたんだ。彼らはいろいろリサーチして脚本を書いたわけだけれど、脚本の内容は実際に起こったことが非常に正確に把握されていた。その点には感謝している」
そのウォルター・ロビンソンを演じたのは名優、マイケル・キートンだ。キートンは本誌にこう語った。