フード&ワインジャーナリストの鹿取(かとり)みゆきさんが、日本ワインを紹介する。今回は、北海道余市町の「ツヴァイゲルトレーベ 2014(赤)」。
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国内外には、人工的に培養した酵母を加えずに、ブドウの果皮などにもともと付いている酵母を生かしてワインを造る生産者がいる。札幌市にあるさっぽろ藤野ワイナリーもそうだ。
培養酵母を使わずとも首尾よく発酵が起きるように、細心の注意を払っている。果梗からブドウの粒を外す際は、一房ずつ手作業で行い、傷んでいない健全なブドウを選ぶことも徹底している。その一方で、添加物は極力減らし、酸化防止剤の使用量もできるだけ抑えている。
こうした造りは、ワイナリーのオーナーである伊與部淑惠さんと佐藤トモ子さん姉妹の亡き弟、鈴木順さんの長年の願いでもあった。ワイン造りを夢見ていたが、道半ばで病に倒れ亡くなった。姉妹は遺志を継ぎ、2009年にワイナリーを設立した。
14年はとりわけ天候に恵まれ、収穫したブドウは、凝縮した味わいに溢れている。ワインの豊かな果実味は、ブドウの力を真っすぐに伝えてくる。
(監修・文/鹿取みゆき)
※週刊朝日 2016年2月26日号