外国人が多く集まる都内の歓楽街からほど近い閑静な住宅街。覚醒剤取締法違反で逮捕された清原和博容疑者が足繁く通っていたというサウナがその一角にあるらしい。噂によれば、入れ墨OKで、その筋の人や芸能人が多く出入りするとか。おっかなびっくり、記者は行ってみた。
大通りを脇に入り7分ほど歩くと、特徴的な形をした建物が目に入る。都心の住所からは想像できない昭和を思わせる外観で、「サウナ」のネオンサインが煌々と光っていた。
時刻は午後11時を回ったところ。2階エントランスを入ると受付で4人の男性が会計中。みながみな肩幅が広く大柄。スーツ姿なので仕事帰りにひと汗かきに来たのかな、と表情をうかがうと眉毛が眉頭しかなかった。目つきは鋭く、会釈は見事にスルーされた。
「お姉さん、いくらー?」
声も大きく太い。会計が終わり、記者の脇を肩で風を切って通る4人に、思わず後ずさりし道を譲った。
受付でロッカーの鍵をもらい、浴場へ入る。中央にかけ湯の湯船があり、壁側にシャワーが並ぶ。シャワーの水圧は肌に刺さるかのように強く、痛いほどだ。清原容疑者もまたこの痛いシャワーを浴びて、キマった世界から現実を取り戻していたのか。するとそのとき、
「ういぃぃい……」
といううめき声が聞こえてきてギョッとする。壁の裏側がアカスリコーナーになっていて、薄暗い中、マッサージを受けているオジサンがあえいでいたのだ。
体を流してサウナに入る。湿気と熱でカピカピに縮み上がったマンガ雑誌が乱雑に置いてあり、手に取ると熱くてページもめくれない。数分ほどして40代くらいのがっしりした体形の男性が入ってきて、記者の斜め向かいに座った。胸板は分厚く、ふくらはぎは筋肉で盛り上がっている。黒々としたクマをこしらえた両目は挑戦的な色をしていて、さらに右の上腕には龍の入れ墨が肩に向かって昇っていたため、会釈は差し控えた。「俺に話しかけるな」オーラが体から充満しているように感じ、記者は気圧(けお)されるようにたまらずサウナを出た。話を聞けていないままではデスクに報告ができない。でも怖い。