え?と思わず声が出た。会員登録の際に交通費を払う必要など説明されなかったし、終電まで時間の余裕はたっぷりある。ちなみにいくら欲しいのか聞くと、
「1万円か、安くても5千円かな」
いったいどこまで帰るつもりなのか。ごねるとサヨナラになりそうなので、しぶしぶ5千円お支払い。
「もしかして金払い悪い?」
こんな露骨に金のにおいを嗅がせるデートってあるんだろうか。よく見ればかわいくないし、本田翼にも似てない。ならば裏話だけでも聞きだそう。どんな男性が人気か聞いてみた。
「スーツ姿のオジサンで気弱そうな人が人気だね」
彼女によれば「カモ」だという。また、新規の客も人気があるらしい。遊び慣れておらず、言われるままにお金を払う客が多く、女性同士で取り合うこともよくあるとか。指名に小躍りしていた自分を殴りたい。
もう少し話をしたいと頼み、返ってきた答えは、
「そろそろ帰りたいし、1万円くれるならいいよ」
こんな出会いしかないのか。風俗ライターの高木瑞穂氏に聞いた。
「その女性は『茶飯女』ですね。タダ飯に心づけももらって月に数万円稼ぐ女性です。婚活バーや相席居酒屋を想像して行くと痛い目見ますよ。女性の9割超がお金目当てですから」
逆ナンとは何だったのか。入会金に利用料、交通費、焼き肉代。約2万円払って得たものは、虚無感。ため息深く、新宿を後にした。
※週刊朝日 2016年2月19日号