知花:客観的に見られるようになるのは訓練ですか?

永田:そうだね。だから、忙しい人ほど歌を作ってほしいね。自分に向き合う時間を作ることで、自分を客観的に見ることもできる。僕は他の仕事をしながら短歌をずっと作ってきたのですが、面白い歌があるんです。<ねむいねむい廊下がねむい風がねむい ねむいねむいと肺がつぶやく>。「ねむい」が6回も出てくる。

知花:それは面白いです! それと、先生からよく指摘されたことが、「詰め込みすぎない」こと。575で一つ言って、77でも一つ言いたくなる。分解したら2首できちゃうような。

永田:例えば、僕の<一日が過ぎれば一日減つてゆく君との時間 もうすぐ夏至だ>は、全然別なことを言っているわけね。「もうすぐ夏至だ」は意味がないんだけど、これがあるから、歌が生きてくる。

知花:そのほか、気を付けたほうがいいことは何でしょう。

永田:出来合いの言葉を使わないことですね。すぐ、「桜が舞う」「花が咲く」など出来合いのフレーズを使いたがりますが。とはいっても、とりあえずは、「57577になっていたらいい」ぐらいの気持ちで、どんどん作って送ってください。

週刊朝日 2016年2月5日号より抜粋