フード&ワインジャーナリストの鹿取(かとり)みゆきさんが、日本ワインを紹介する。今回は、宮崎県五ヶ瀬町の「キャンベル・アーリー 2015(ロゼ)」。
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九州中部を南北に貫く九州山地。その山あいに抱かれるように五ヶ瀬ワイナリーはひっそりと佇んでいる。一帯は五ヶ瀬川の水源にあたり、標高は500~700メートル。九州とはいえ、真夏でも夜はひんやりと涼しく、エアコンがいらないほどだ。
ワイナリーは11年前、生産量が増えたブドウを有効的に使おうと、五ヶ瀬町の町役場とJAと酒造メーカーが出資して設立された。こうしたワイナリーでは品質向上に苦労することが多かったが、最近では奮闘する造り手たちの努力が実を結んでいる。
2015年産の「キャンベル・アーリー」も、醸造責任者、佐伯一朗さんらのチャレンジで格段においしくなった。
「冷涼な五ヶ瀬のブドウの個性を生かし切り、果汁の酸化を防ぐ工夫をしました」
と、佐伯さんは話す。
ワインは、みずみずしい果実味とイチゴのような香り、そして冷涼な土地ならではの豊かな酸味を持ち、溌剌とした魅力を放つ。佐伯さんの努力の証しだ。
※週刊朝日 2016年2月5日号