林:ピュアで無垢な感じを、求めていたんでしょうね。
麻生:いやぁ、ピュアでしかなかったみたいな。当時18歳か19歳でしたけど、ほんとに何もできなくて、今でも悔しいです。今村監督、亡くなられちゃいましたし。このあいだNHKの「あさイチ」という番組に出演したときに、今村監督がその当時の私のことを語っている映像が流れたんです。監督は「やりたいことを十分撮れなかった。あの子がまだ力がなくて」って。
林:えっ。
麻生:ああ、やっぱりそうだったんだと思って。私も「私一人がこの作品を台無しにしてしまった」と思っていたから、ぜんぜん不思議じゃなかったんですけど。
林:でもきっとその後、「あの子のおかげでいい映画になった」という言葉が続いていたと思いますよ。
麻生:フォローの言葉はありました。「狙っていたものだけじゃなくて、僕の望外の喜びみたいなものがその中に少し出た」と。私、泣いちゃいました。
林:こんなに素晴らしい女優さんになられて、今村監督がごらんになったら、「自分の目は正しかった」と思うんじゃないですか。
麻生:今村監督が「映画に出続ける女優になってほしい」と言ってくださったから、頑張れたと思います。
※週刊朝日 2016年2月5日号より抜粋