「大地は要人のSPや機動隊のバスの運転をする仕事などをしていました。Aさんとは仕事上、接点があった。大地は何回かミスが続いていて、Aさんから『始末書を出せ』と言われ、提出したら『こんなものじゃ、受け取れない』と書き直しを命じられた。揚げ句、『お前は2年前のクレーン車の玉掛けの試験のときにカンニングした。それについても全部、書け』と命じられたそうです。大地は『そんなことはやっていない』と拒んだらしい。いじめとしか思えない。そう県警の監察官に質問したら、『Aさんは仕事熱心のあまりついカッとなったのだろう』と。Aさんは口頭注意されただけとのことです」

 両親によれば、大地さんは長崎県の宴会の席で裸踊りをさせられたという。

 だが、県警の監察官は両親に「(裸踊りは)木戸くんが自ら率先してやっていた」と説明したという。

 大地さんは幼稚園のころからサッカー一筋のスポーツ青年だった。交際している婚約者がいた。

「2年前から彼女と付き合い始めて、結婚したいからと2人でうちに報告に来ました。もう、マンションも決めていて、彼女と彼女のお母さんはマンションの下見もしていた。(今年5月の)サミットが終わったら生田神社で式を挙げる予定でいたんです」(母親)

 自殺の2週間前には、両親と大地さんと婚約者の4人で高知県へ温泉旅行に出かけた。

「高知の『ひろめ市場』へ行ったりしました。露天風呂に一緒に入ったときになかなか入ってこんなと思っていたら、10分以上たってやっと入ってきた。何していたのかと聞いたら、『お尻から血が止まらんのじゃ。最近、出血がひどい』と言う。『なんで』と聞いたら『わからん。今ちょっとしんどいんじゃ』の一言だけだった。出血はストレスからではなかったかと思う」(父親)

 2年ほど前、父親と2人で酒を飲みながら、「こんな腐った職場ではもうやっとられん」と泣きながら、胸のうちを語っていたことがあった。父親はこう憤る。

「大地はいじめ、パワハラが原因でうつ状態になるまで追い詰められた。一生懸命、汗みずたらしてここまで育ててきたのに、機動隊の先輩や上司らの手によって、命を落とした。それを考えたら胸が張り裂けるようです」

 兵庫県警に質問すると、「ご遺族には詳細に説明しましたが、個人のプライバシーにかかわることでもあり、回答は控えさせていただきます」とした。

(本誌取材班・上田耕司、藤村かおり、亀井洋志、牧野めぐみ、鳴澤 大/黒井文太郎)

週刊朝日  2016年1月22日号

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