「先生」もつらいよ!? (c)朝日新聞社
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 芥川賞受賞作『火花』が245万部という異例のヒットを記録した、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹。

 莫大であろう印税額について多くの臆測が飛んでいるが、出版業界で一般的な印税計算の式は「定価×部数の10%」。

 これを『火花』に置き換えると、単純計算で3億2千万円近い額が著者に転がり込む計算だ。所属事務所である吉本興業がいくらか取るとする声もあるが、

「(又吉に入る額として)最低でも1億円は堅いでしょう」(出版関係者)

 だが、周囲によると又吉は受賞後も特にはしゃぐ様子はなく、変化は見られないという。又吉と二人三脚で作品を作り上げてきた『火花』担当編集者の浅井茉莉子さんの証言。

「又吉さんも、予想外の売れ行きに驚いています。食事に行った店でも店員さんにきちんと挨拶をするし、タクシーに乗ってから窓を下げて挨拶してくれるのも変わらない。目に見えて大喜びするでもなく、淡々としていますね」

 とはいえ、懐のホクホク具合がにじみ出る瞬間も。テレビ番組では、最高月収が「千万円台」に乗ったことを明かした。

 お笑いと執筆活動について両立を明言している又吉だが、受賞後は「先生」呼ばわりされることが増え、相方の綾部祐二との「格差」が報じられることも。お笑い評論家のラリー遠田さんは、こう分析する。

「芸人は、本能的に『やりにくい雰囲気』になることを避ける。つまり、『先生』と過剰に持ち上げること自体がネタで、いじることで笑いに持っていこうとしている。これは、又吉さんが高尚なところに行き過ぎないように配慮する、芸人同士の思いやりです」

 次作は未定だが、「準備し始めている」とも。作家は2作目が肝心だ。2016年も火花ならぬ「花火」を打ち上げられるか。

(本誌取材班=上田耕司、亀井洋志、小泉耕平、永井貴子、長倉克枝、永野原梨香、鳴澤大、西岡千史、秦正理、林壮一、牧野めぐみ、松岡かすみ、山内リカ/今西憲之、菅野朋子、岸本貞司、桐島瞬、柳川悠二)

週刊朝日 2016年1月1-8日号