「『火垂るの墓』は、戦後の焼け跡、闇市を生きたからこそ生まれた作品。戦争で義妹を失った“業火”というんでしょうか。火に対する恨みに野坂文学の姿があると思っています」

 アニメ映画「火垂るの墓」の監督、高畑勲さんはこんなコメントを出した。

「きっといま、久々に肉体から解き放たれて楽天的になり、日本国中を、沖縄を、自由に羽ばたきながら飛び回り、日本を戦争の道へ引きずりこませまいと頑張っている人々を、大声で歌って踊って、力強く励ましてくれているにちがいない」

 長年、親交のあった女優、吉永小百合さんも、「ご快復を待っていましたのに叶わず残念です。野坂さんの飛びぬけた行動力と非戦への思いを、今しっかりと受け止めたいです」との談話を発表した。

 野坂さんは晩年、暘子さんにこう話していた。

「僕は、まだ死ねない。戦争を体験した者として、戦争の悲惨さを今の若者たちに伝えていくのは僕の使命だ。まだ終わっていない」

 本葬は19日に東京・青山で営まれる。焼け跡を原点としたアナーキーな人生は幕を閉じた。でも、彼の「使命」は全人類の使命でもあるはずだから、永遠に終わらせてはならない。

週刊朝日 2015年12月25日号より抜粋

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