ダリル・ジョーンズとの一体感が生み出す極上グルーヴ
Avery Fisher Hall 1987 (Cool Jazz)
いよいよオールカラー版『新マイルスを聴け!アコースティック1945-1967』(双葉社文庫)の刊行まで、あと数日と迫ってきました。今回はタイトルにあるように1967年までですが、前回(ヴァージョン8)はそこまでで272ページ、今回は345ページというわけで、同じ年代を対象にしながらも約70ページの増加となっています。なので書名に「新」と謳われているわけですが、「またか」「いつまで続くんだよ、ったく」などと言わず、ほぼ完全に新しく生まれ変わった『聴け!』を書店で手に取ってやってください(買うか買わないかは、それから決めていただければと)。
さて今回ご紹介するのは、1987年6月のニューヨーク・ライヴです。自分がいたときのライヴだけに感慨もひとしおのものがありますが、正直な話、よく覚えていません。だってそうですよね? ライヴって、意外とすぐに忘れませんか?
このライヴ、オーディエンス録音で、音はやや割れています。その意味では優先的に推薦しがたい面もあるのですが、会場となったエイヴリー・フィッシャー・ホールって、こういう音なんですよ。もう少しいいとは思いますが、たいした違いはありません。
したがってこのライヴ盤を称して「音が悪い」というのは誤解であり、そもそもこういう音なのです。そして、ここがむずかしいところです。つまり「音がいい」とか「悪い」というのはカンタンですが、状況やその他の条件を加味した上でなければ、いちがいに「いい・悪い」はいえないのです。このライヴ盤を例にとれば、実際に会場で鳴っていた音に近いわけですから、「忠実な再現」といってもまちがいではありません。ここで再度、今回の『オールカラー聴け!』の序文の一部を抜粋しておきたいと思います。
一般に「オトが良い・悪い」とされる判断基準は曖昧模糊としたものであり、評価や印象は聴き手によって大きく異なる。また時代性や録音状況(録音機器の発展史も含む)に対する一定の理解も求められる。チャーリー・パーカーのサヴォイやダイアル時代の音質、多くのブートレグのライヴ盤にみられる音質等を「オトが悪い」と切り捨てるのは簡単だが、それはしかし「どこか間違っている」とも思う。
それはそれとして、ニューヨーク・ライヴに外れなしの格言どおり、この日もマイルス一党は燃えに燃えています。ジャケットにも写っていますが、マイルスとダリル・ジョーンズ(ベース)との息もぴったり、この2人が一体となって生み出すグルーヴィーなノリには格別なものがあります。強力なライヴがまたしても登場ということで、また来週。
【収録曲一覧】
1. One Phone Call / Street Scenes-Speak
2. Star People
3. Perfect Way
4. The Senate / Me And You
5. Human Nature
6. Wrinkle
7. Tutu
8. Splatch
9. Time After Time
10. Movie Star
11. Burn
(2 cd)
Miles Davis (tp, key) Kenny Garrett (as, fl) Robert Irving (synth) Adam Holzman (synth) Foley (lead-b) Darryl Jones (elb) Ricky Wellman (ds) Mino Cinelu (per)
1987/6/19 (NY)