100人以上の幹部の粛清、潜水艦発射ミサイル実験の失敗など北朝鮮の若き最高権力者、金正恩の暴走が止まらない。ジャーナリスト・石高健次が北朝鮮の現状を取材した。
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北朝鮮が金正日時代、一度も開かなかった労働党大会を来年5月、36年ぶりに開く。
内には党幹部の結束、外には政権基盤の安定を誇示するのが目的だろう。しかし、これは、両刃の剣だと思う。まず、最近の業績で誇れるものがない。
それどころか、在韓国北朝鮮情報筋によると、経済の推進力とすべく10月に完成した白頭山英雄青年発電所(水力)は、突貫工事が祟ってか、水漏れを起こし、責任者の崔竜海担当書記が、罰を受けて所在不明になっていると伝えられる。もろい玄武岩を完全に取り除いて支持層に直接構造物の基礎を打ち込まなかったため底から水漏れを起こしているらしい。党大会で金正恩氏が「希望ある将来像」を具体的計画とともに示せなければ、幹部のみならず人民の面従腹背がさらに進み、統治の基盤が逆に不安定になる可能性もある。
「通常、党大会では、ここまで大きく前進した、次はこれだと示す。また対南・対米工作でいかに優位に事を進めたかを誇示する。が、そうできる成果というものがない。国外からリゾート開発など投資を募り、カネ集めをしたいのが本音だろう」(朴斗鎮コリア国際研究所長)
北朝鮮が、韓国民による金剛山観光の再開を朴槿恵政権に申し入れているのも外貨稼ぎのためだろう。
しかし、経済発展を求めれば、外国との交流・融和政策を取らざるを得ない。
北朝鮮の政策が変化すれば、拉致をはじめとする日朝間に横たわる課題解決へプラスに作用するが、現実はそう甘くはないだろう。
(ジャーナリスト・石高健次)
※週刊朝日 2015年12月18日号より抜粋