詩人、エッセイストの佐々木桂さんが、日本津々浦々に残る田園風景とその米を紹介する本誌連載「美し国、旨し米」。今回は、お酒に使う米について取り上げる。
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筆者は米も好きだが日本酒も好きで、利き酒師の資格を持つ。今回はお酒に使う米のお話を。
食べる米と異なる日本酒の原料米(酒米)の特徴は三つある。
まずは、粒が大きいこと。日本酒は米の表面を削れば削るほどおいしくなると言われる。外側に多いタンパク質が雑味をもたらすからだ。小さい粒だと削るときに砕けてしまう。そのため、粒は大きいほどいい。
次に「心白(しんぱく)」が大きいこと。心白は、お米の真ん中にある不透明な白い芯のようなもので、粘度が高く削っても砕けにくい。ちなみに食用では心白が多いとパサパサするので、透明なお米ほどよいとされる。
三つめが吸水性の高さ。水分は、麹菌の活動を活性化するのに役立つ。
これらの特徴を備えたのが、山田錦、美山錦、五百万石などの酒米だ。
※週刊朝日 2015年11月27日号より抜粋