「男やもめ」と言われ、なんとなくネガティブなイメージが強い男性シニアのおひとりさま。孤独を受け入れ、人生の転換をうまく図った人も少なくないが、多くの問題も存在している。内閣府の高齢社会白書(平成27年版)によると、「会話の頻度(電話やEメールも含む)が2~3日に1回以下」という60歳以上の単身高齢男性が約29%。「ほとんどつきあいがない」は17%で、「頼れる人がいない」は20%など、孤独なことがわかる。また、貧困問題も深刻だ。
では、どうすれば“おひとりさま力”を高めていけるのか。『おひとりさまの最期』(朝日新聞出版)の著者で社会学者の上野千鶴子さんが『男おひとりさま道』のなかで提唱する10カ条は下記のとおり。つきあいは利害損得を離れる、女性の友人には下心をもたないなどは、とくに参考にしたい。
食事では、公衆衛生学などを専門とする東京大学の谷友香子さんらが、一人で食事をする(孤食)のリスクを報告している。独居で孤食する高齢男性は、誰かと一緒に食事をする(共食)高齢男性よりも、約2.7倍うつ病を発症しやすい傾向があるというのだ。谷さんは言う。
「孤食は共食より不健康な食行動をしやすい。栄養状態が悪くなることで、メンタルにも影響が及ぶと考えられます。また、コミュニケーションの機会を失い、社会とつながりが希薄になるため、うつになりやすいとも推測できます」
孤食の機会が多い人は、趣味の会やサークルなどで出会った仲間と、帰りがけに食事などをするとよいかもしれない。スポーツジムやカルチャーセンターなどではシニア向けのプログラムが用意されている。そこが一つの社交場になるので、その気になればいくらでもつながれる。
「男性は定年退職を迎え、妻に先立たれると、たいへんな孤独感に苛まれる。昨日できていたことが今日できなくなるという、老いという現実にも向き合わなければならない。でも、そういう不安は誰にでもあるもの。そこは割り切って一人きりでいない。まずは誰かとつながる努力をしてほしい」(高齢者の生活問題に詳しい第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部の小谷みどりさん)
その一歩を踏み出せるか──。それが男おひとりさまを楽しめるかどうかの分かれ道になる。
【男おひとりさま道10カ条】
第1条 衣食住の自立は基本のキ
第2条 体調管理は自分の責任
第3条 酒、ギャンブル、薬物などにはまらない
第4条 過去の栄光を誇らない
第5条 ひとの話をよく聞く
第6条 つきあいは利害損得を離れる
第7条 女性の友人には下心をもたない
第8条 世代のちがう友人を求める
第9条 資産と収入の管理は確実に
第10条 まさかのときのセーフティネットを用意する
『男おひとりさま道』(上野千鶴子著)から
※週刊朝日 2015年11月20日号より抜粋