「今から50年ほど前、付き合いの手段として年賀状が非常に有効で、若者にとって数の多さは人気の象徴であり、異性に思いを伝えるラブレターの代わりでもありました。でも今はメールや携帯電話が発達し、一部の年賀状は『去年来たから今年も出す』という儀礼的なものに。それでは付き合いとして意味をなしませんので、その場合は出さなくてもよいでしょう。特に仕事の付き合いが不要になったシニアならなおさらです」

 日本マナー・プロトコール協会の明石伸子理事長もこう話す。

「年賀状をやめるのは、マナー違反には当たりません。出すも出さないもその方の自由です」

 ただ、何も伝えず急にやめると、具合でも悪いのだろうかと相手に心配させる懸念があると言う。

「今年書く年賀状の末尾に一言、次の年から出さないという旨を添えるのがよいでしょう。とはいえ『年賀状だけの付き合いなのでやめたい』『虚礼を廃止しましょう』と“本音”を書くのはNG。相手に不快な思いを抱かせない表現を心掛けましょう」(明石氏)

 ふむふむ。でも、うまい言い方を考えるのは意外に難しい。そこで、具体的な例文とポイントを前出の中川氏に教えてもらった。

 年賀状辞退のあいさつで大切なことは三つ。【1】すべての人に対しやめる旨を明記する【2】辞退する理由は、年齢など当たり障りのないものにする【3】これが絶交ではないことを伝える──ことだ。

「『あなた一人だけやめます』としては印象が悪い。事実とは違っても『みんなにそうしていますよ』と伝えましょう。また、本当は大病を患ったなど重大な理由があったとしても、正直に書くと相手が心配し、お見舞いをしなくてはと気を使わせてしまいます。年齢による体力の不足など、差し障りのないものがよいですね」(中川氏)

 つまり、「この数年頓(とみ)に視力が弱まり年賀状の準備が困難になって参りました」「体力の衰えを痛感し年末を悠々と過ごしたく決意いたしました」など、相手が状況を察せられるようなものがおすすめだ。親しい人なら顔写真を入れて健在を示し、安心させるのもよいだろう。

週刊朝日 2015年11月20日号より抜粋

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