<私たち国民は、他国に平和と安全を依存してきた「一国平和主義」の幻想から目覚めて、まず自らの手で自らの国を守る気概を養わなければなりません>

<わが国が、憲法の制約を理由に集団的自衛権を行使しないならば、日米の防衛協力は画に書いたにすぎなくなり、アジア・太平洋の軍事的危機はますます高まっていくでしょう>

 これらの主張は「積極的平和主義」を掲げ、集団的自衛権の行使を容認する安保関連法を成立させた安倍政権の政策とほぼ重なり合っている。さらには、こんな記述もあった。

<先の大戦を一方的に断罪するわが政府の謝罪外交は、国の歴史や国難に尊い命をささげた戦没者をないがしろにするものであるとして、国民の大きな非難をうけています>

 これも、今年8月に戦後70年談話を発表してアジア諸国への「謝罪」のトーンを以前より弱めた安倍首相の方針とピタリと一致する。他にも、ジェンダーフリー教育や夫婦別姓制度などにも反対意見を表明している。

 集団的自衛権の行使が可能になった今、両団体の次のターゲットは無論、憲法改正だ。11月10日には、日本会議から派生した団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が、宗教界、言論界、国会議員らを集め、日本武道館で「今こそ憲法改正を!武道館一万人大会」(共同代表は櫻井よしこ氏ら)を開催する予定だ。代表発起人には首相と昵懇(じっこん)のJR東海の葛西敬之名誉会長、作家の百田尚樹氏などが名を連ねる。

 神政連や日本会議はなぜ、ここまで大きな勢力を持つに至ったのか。日本会議ウォッチャーで「子どもと教科書全国ネット21」事務局長の俵義文氏が解説する。

「小選挙区制では、党から公認をもらえなければ選挙に勝てない。日本会議に所属することで『自分も安倍首相と同じ考えで、反抗はしない』という姿勢を示す意味合いがあるのでしょう。一部のコアなメンバーを除き、付和雷同的な理由で所属している議員が多いと思われます」

 神政連と日本会議の両方に所属するある自民党議員も、こう証言する。

「いわゆる安倍組である日本会議に入らないと家来(閣僚や役職)になれないと思って、12年に安倍さんが総裁選に勝ってから、続々と周りが加入した」

“長いものには巻かれろ”と言わんばかりに、多くの国会議員が馳せ参じているのである。

(本誌取材班)

週刊朝日  2015年10月23日号より抜粋

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