ジャマイカで見せたダンスで経済政策もお手の物!? (c)朝日新聞社 @@写禁
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 自由主義経済ではモノの価格は市場が決める。そんな常識を覆す安倍晋三首相のツルの一声で、通信業界は大揺れだ。

 安倍首相は9月11日、「携帯料金などの家計負担の軽減は大きな課題」と指摘。負担減のための方策を検討するよう、高市早苗総務相に指示したのだ。異例ともいえる介入発言を受け、携帯大手3社の収益悪化への懸念が加速。3社の株価は大きく下げた。

 背景には、家計支出のなかで通信料が大きく伸びていることがある。携帯電話やスマホを利用する利用者にとってはありがたい発言だが、理由はほかにもあるようだ。

 SMBC日興証券シニアエコノミストの宮前耕也氏が説明する。

「『企業業績が良くなれば賃金が上がり家計は潤う』とのもくろみが外れ、賃金は上がらず、円安で物価だけが上がり、家計は苦しい。政府はアベノミクス批判の根底にある『家計の苦しさ』を解消しようと考えているのでしょう」

 アベノミクスを掲げた安倍政権は当初、物価2%上昇で適度なインフレを起こし、好循環を生もうとしていた。しかし、通信料の値下げは、物価を下げ、デフレを推し進めることになりかねない。

「今後、政府は家計を助ける策を打ちつつ、賃金を上げるように企業に働きかけるでしょう。そして、賃金が上がってから、また物価を上げる。値下げの動きはしばらく続き、さまざまな業界で価格競争が激しくなる可能性があります」(宮前氏)

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