「グローバルホークが敵機を察知したり、画像や映像を送ったりするためには最大274Mbps(メガビット毎秒)の通信容量が必要です。ところが、いま自衛隊が全国に張り巡らせているマイクロ波の回線は、札幌~市谷(東京)間で104Mbps、市谷~健軍[(けんぐん)本]で208Mbpsしかない。グローバルホーク1機分だけでマイクロ回線の容量は満杯状態。せっかく得た敵機の姿すら満足に防衛省に送れないことになりかねない」(防衛省関係者)

 マイクロ回線は自衛隊が自前で所有する唯一の通信回線で、45年前から約10年間かけてつくられ、その後にデジタル化も行われた。「人が行かないような田舎の山頂などに中継局を設置した」(同前)という。中継局を経由して無線で全国にデータを伝送できるしくみだ。

 ただ、高度成長期からバブルの時代にかけて自衛隊が所有する兵器の通信機能や需要が大幅に増大し、マイクロ回線の通信容量が追いつかなくなった。このため、自衛隊はマイクロ回線とは別に、彼らが「部外回線」と呼ぶ民間企業が保有する光ケーブルの回線を専用線として借りて、容量を補強してきた。

 複数のOBらによると、自衛隊のマイクロ回線は長年の使用で老朽化し、「通信品質が劣るため、その3~4割しか能力を発揮していないといわれる。電話やファクスが不調になることもある」(前出の防衛省関係者)という。

 防衛省の通信システム幹部も本誌の取材に対し、

「マイクロ回線は通信容量が少ないので、すべてを頼ると破綻する」

 と、その事実を認めた。では、その対策はどう考えているのか。

「新しい装備を導入したけど容量が足りずに使えないとなると本末転倒なので、どのような通信容量が必要かを考えながら、バランスを持って必要な通信量を確保していきます」

 前述したように、これまで自衛隊は、通信量がマイクロ回線で足りなくなると民間の専用線を調達し、組織の中枢機能を支えてきた。

 防衛コンサルタントの試算によると、この「専用線」の使用料が年約75億円。マイクロ回線は自前で整備しているため、使用料こそかからないものの、中継局やその周辺の設備や道路の補修・維持管理にあてる費用が約40億円、そして自前のために防衛省職員でもある保守管理要員にあてる人件費などで約26億円弱の計約66億円の費用がかかっている。自衛隊職員の保守要員は全国五つの方面隊でそれぞれ約130人おり、これ以外にもメーカー担当者に補修などを頼めばさらに経費がかかる。

週刊朝日  2015年10月2日号より抜粋

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