岩手で起きた安保法案への反乱。実は仙台市や山形市でも起きている。2日に投開票された仙台市議選。自民党の当選した現職13人のうち、11人は前回4年前より得票を減らした。

 一方、安保法案反対を掲げた民主の公認候補9人は全員当選。共産党は7人が当選し、得票率も3ポイント以上伸びた。共産党県委員会の中島康博委員長は「戦争法案への怒りが市民にも広がった」と勝因を語った。

 山形市長選(9月13日投開票)は自民・公明が推す元経産省職員の佐藤孝弘氏(39)と、民主・共産などが推薦する元防衛省職員の梅津庸成氏(48)の事実上の一騎打ち。7月上旬の自民党の世論調査では佐藤氏がダブルスコアの優勢だったが、安保法案の衆院通過や県知事が梅津氏の支援を表明したこともあり、今や接戦となっている。

 自民党県連関係者が言う。「安保法案への市民の反発は想像以上に大きく、特にお年寄りや主婦が怒っている。山形市は安倍政権を支える遠藤利明五輪担当相のお膝元。これもマイナスに作用している」

 安保法案をめぐっては地方議会の反発も目立つ。

 朝日新聞の7月上旬までの調査では、同法案や集団的自衛権の行使容認をめぐり、全国で331の地方議会が国会や政府への意見書を可決した。

「反対」の立場が144議会、「慎重」は181議会。福島県南相馬市など一部の議会では、自民党系議員が「反対」を表明したことも大きな特徴だ。

 広島県庄原市では7月31日、同党の小林秀矩県議が会長となり、共産党の市議らと共に「ストップ・ザ・安保法制 庄原市民の会」を発足させ、反響を呼んだ。

 日増しに広がる有権者や身内の自民議員の反発。9月上旬には安保法案の成立が濃厚で、さらなる逆風が吹くことも予想される。

 同月下旬には自民党総裁選、来年夏には参院選も控えるが、安倍首相は盤石なのか。政治評論家の浅川博忠氏はこう見る。

「総裁選は表立って手を挙げる候補がなく、無投票で安倍首相が再選されるでしょう。大変なのは来年の参院選。これから安保法案成立に加え、原発再稼働やTPP交渉の決着も重なり、内閣支持率はさらに下がる。そうなると参院選での大敗もあり得る。選挙後は自民党内で『安倍おろし』が一気に起こるでしょう」

 首相のライバル、石破茂地方創生担当相を支える議員からは「参院選は苦戦必至。その後が大勝負だ」との声が上がっているという。

 身から出たサビとはいえ、首相は今後どう切り抜けていくのか。

(本誌・一原知之)

週刊朝日 2015年8月21日号

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