「国の安全保障の在り方が、県知事選の最重要課題へと浮上してしまった」
自民・公明の支持を受け、9月6日投開票の岩手県知事選挙に出馬するはずだった参院議員の平野達男元復興相(61・無所属)。8月7日に緊急の記者会見を開き、一転不出馬を表明した。
本来なら震災復興などを争点に、民主や生活などが支持する現職・達増拓也氏(51)と戦うつもりだった。しかし、安倍政権が強引に進める安保関連法案が知事選の争点に浮上し、「逆風が吹いて戦えない」と辞退を決断したようだ。
地元紙記者が解説する。
「現在2期目で大きな失点のない達増さんはもともと強敵です。そこへ7月16日、安保法案の衆院での採決強行。県民には安倍自民党にお灸をすえてやろうというムードが広がりました。平野さんにとっては想定外。『首相に足を引っ張られた』との気持ちでしょう」
ただ永田町では、今回の平野氏の不出馬は安倍自民党が迫ったとの見方が広がっている。
平野氏が知事選に出馬すれば、10月に岩手選挙区で参院補欠選挙が実施される。安保法案への批判が強い今の状況では知事選、補選の連敗も起こり得る。そうなると政権に大ダメージ。安保法案への批判がさらに高まり、支持率も急落する。
ならば知事選不戦敗にとどめたほうがマシと、平野氏に辞退を迫ったというのだ。
「8月5日に首相と、平野氏の後見人である二階俊博総務会長が約40分会談している。ここで不出馬が決まったようだ」(官邸関係者)
解釈改憲という禁じ手を使い、自衛隊の活動範囲を拡大させる法案を進めながら、有権者の審判からは逃げる……。もし事実だとすれば、首相は気概に欠ける。