だが、同じころ、東京都が20年の東京五輪招致を目指して動き始めた。老朽化していた国立競技場の建て替えは必至で、前年のラグビーW杯でも使えるよう建設計画が立てられた。
だが結局、計画は白紙撤回。ラグビーW杯には間に合わなくなった。8万人収容の新国立と比べて約8千席少ない日産スタジアムでの開催となると、チケット収入が開幕と決勝の2試合だけでも単純計算で約3億2千万円の損失。大会組織委員会の嶋津昭事務総長は記者団に「ビジネスモデルは厳しくなる」と痛手を負ったことを語っている。
時系列を追うと、国立競技場の建て替え問題に、ラグビー界が巻き込まれてしまったことがわかる。
とはいえ、今回のとばっちりは、やはり森氏のキャラによるものかもしれない。
「新国立のこけら落としを、五輪ではなく前年のラグビーW杯としたのは、間違いなく森氏の政治力。そして、計画の白紙撤回に時間がかかったのは、周囲が森氏に遠慮したせいもあると思う」(前出の協会関係者)
(本誌・一原知之、西岡千史、小泉耕平、古田真梨子、森下香枝)
※週刊朝日 2015年8月7日号