新国立競技場騒動に、五輪招致の当事者は何を思うのか。作家で前都知事の猪瀬直樹氏(68)が激白した。
◆ ◆ ◆
新国立競技場の白紙化が決定されたこと、正しい決断ですが、遅すぎました。
私の著書『昭和16年夏の敗戦』(中公文庫)では、縦割り体質で情報共有もできないまま、対米戦争に突入していった戦前の日本を描きました。今回の問題でも最終的な責任がどこにあるのか不明なまま、ズルズルと話が進んでしまった。日本の悪い体質が出てしまったように思います。
まず、巨大な建築プロジェクトの経験が乏しい文科省と傘下のJSCが事業を仕切ったことに問題がある。政治がリーダーシップをとって縦割りを廃し、その道のプロである国交省にまかせていたら、建設会社との価格交渉ももっとシビアにできていたかもしれない。
文科省は一時、totoの売り上げをつぎ込むという話まで出していましたが、本来は各競技の強化費に使われるお金を使ってしまうという、あまりにずさんな計画でした。最も責任が重いのは官邸をはじめ、ここまで対応を官僚に任せきりにしていた政治家たちでしょう。総工費が「3千億円」になると報じられた時点から、政治家が危機感を持って対応するべきでした。