2020年東京五輪のメイン会場となる新国立競技場の建設計画をめぐる迷走は、国民の怒りを増大させた。計画白紙を決めた安倍首相は「もう5年しかない」と担当大臣らにゲキを飛ばすが、誰も責任を取らないまま再出発する姿勢は腑に落ちない。戦犯は一体、誰なのか。
ロコツな降格人事だった。安倍晋三首相は7月21日、新国立競技場の建設計画について再検討する関係閣僚会議を発足させた。トップには遠藤利明五輪相を起用し、下村博文文部科学相はナンバー2に格下げ。事業の主導権も日本スポーツ振興センター(JSC)と監督する文科省から、国土交通省に移した。
全体の指揮は首相官邸が執り、新競技場の工費削減と2020年春までの完成を目指していく。この新体制を自民党ベテラン議員が解説する。
「首相官邸が6月上旬から計画見直しを考えていたのは事実です。でも下村さんは『変更は困難。19年ラグビーW杯はおろか、20年五輪にも間に合わなくなる』の一点張り。費用の削減も真剣に考えなかった。さすがの安倍首相もアキれて、今回は指示どおりに動く遠藤さんで刷新を図ったのでしょう。当初から不安視された文科省とJSCにも見切りをつけ、大型公共事業に慣れた国交省を中心に据えた。もう失敗は許されないという決意の表れです」
新競技場の総工費が1300→3千→1625→2520億円と乱高下し、結局白紙となった今回の騒動。責任の所在が不明確だったことも国民の怒りを増大させた。デザインを決めた建築家・安藤忠雄氏、JSC、文科省、東京五輪組織委員会の森喜朗会長、安倍首相……。戦犯は誰なのか。