貧困に苦しむ下流老人が問題になっている。貧困は健康をもむしばむのだ。
高齢者を4年間追跡調査した2012年の研究では、生活保護を受けている、いわば下流老人は、年収250万円以上の上流老人と比べて最大で3.5倍死亡率が高かった。がんになるリスクも下流老人のほうが高いという調査もある。また、所得が低い人ほど、うつ状態にも陥りやすい。
高齢者約3万3千人を対象にした調査では65~69歳では、最も低所得のグループは最も高所得のグループと比べて平均で5倍、男性で6.9倍、女性で4.1倍うつ状態の人が多かった。
横浜市内の住宅街。Bさん(53歳、男性)は、生まれたときからここで暮らす。
「こんな日は朝からひどい頭痛がします。強い薬を処方されていますが、飲みなれるとよくないので控えるようにしています」
Bさんはうつ状態などの精神障害のため、長く就労していない。
育った家庭は家計が苦しく、中学卒業後、近所の部品工場に就職した。だが人間関係などから職場に行きづらくなり、10日ほどで離職。父親が働く製材所に勤務したこともあったが、1カ月働いては半年休むという生活だった。21歳のとき、精神疾患と診断された。
同居して家計を支えていた2歳年下の弟が8年前に病気になると、生活保護を受給する生活となった。
生活はつましい。朝食はコーンフレークと牛乳。昼食は菓子パンとペットボトルの紅茶。ガス代の節約のためだ。夕食はひやむぎ。野菜を食べたいがお金がかかるので、野菜ジュースで代用している。
「以前はアイドルのコンサートへ行くのが生きがいでしたが、今は、食べて寝るだけの生活です。気晴らしもなく憂うつになります。転居にも精神科の主治医の判断が必要で、主治医に人生を握られているように感じます」