田原:そういう意味では、日本は湾岸戦争にもイラク戦争にも参加しなかった。今度、集団的自衛権で中東での戦争に参加することになれば、日本でテロが起きる可能性が出てきますね。
鳥越:イスラム過激派から日本が敵と見なされたら、そうなりますよ。僕は新幹線が狙われると思う。この間の焼身自殺だけであれだけのことが起きたんですから。もし走行中に爆弾を爆破されたら、千人以上が亡くなりますよ。
田原:そこが問題ですね。アメリカが仕掛けた戦争、あるいは「テロとの戦い」に、今後、日本が参加するのかどうか。
鳥越:そうです。国会では自衛隊員のリスクが増えるとか増えないとか議論していますが、増えるのは当たり前であって、それどころかリスクが増えるのは国民全体なんですよ。ロンドンやマドリードで起きたことが、東京で起きないということはない。
田原:そういう議論を野党もマスコミもしないですね。
鳥越:マスコミの中でも本当にイスラム原理主義の「テロリスト」と呼ばれる人たちの思いまで取材している人はあまりいない。単なる悪者と切って捨てるのは簡単だけど、彼らには彼らなりの論理がある。「聖なる戦い」で死ねば天国にいけるという教えがあって、教育水準が高い人でも自爆攻撃に喜んで身を投げ出す。肯定する必要はないけれど、そういう人たちと真正面から戦うのはよくない。
田原:オバマ政権が終わり、来年の米大統領選で仮に共和党政権、例えばブッシュ前大統領の弟のジェブ・ブッシュ政権が誕生したら、IS(「イスラム国」)と地上戦をやる可能性がある。そのとき、日本は出ていくんでしょうか。
鳥越:このまま安倍政権が続いていれば、最初のテストケースだから行くでしょう。「新3要件」があるといっても、理由は後からこじつけられる。国会の討論を聞いても、中谷元・防衛相をはじめ答弁がコロコロ変わります。答えに窮すると4、5人の官僚がワーッと集まって大臣の耳元でささやくでしょう。政治家も法案の中身を理解していなくて、実際に書いている官僚が全部コントロールしているんですよ。
(構成 本誌・小泉耕平)
※週刊朝日 2015年7月31日号より抜粋