妻の仕事や夢を夫が支える――。夫唱婦随ならぬ「婦唱夫随」という夫婦のカタチを、「60代から下の世代では、今後増えていく可能性がある」と分析するのは、博報堂新しい大人文化研究所統括プロデューサーの阪本節郎さん。その根拠として、70代以上と60代以下の夫婦関係の違いを指摘する。
「見合い婚が主流の70代以上に対し、団塊世代を筆頭にする60代からは恋愛結婚が多い。女性も主体的に相手を選んでいるのです」
夫が死んで初めて自由になれると考える70代以上に比べ、そうした主体性のある妻たちは、子育てが一段落したり夫が定年になったりした段階で、「これからは自分の時間」と気持ちを切り替えられる。
「最近は夫の定年などを機に仕事や起業を考える女性が少なくありません。友達を招いてお茶する延長で、自宅カフェなどを始めるケースも多いですね」(阪本さん)
13年に博報堂新しい大人文化研究所が40~60代を対象に行った調査で、定年退職後の60代男性は「最近、配偶者との間で増えた時間」として、「会話する時間」「相手の話を聞く時間」を多く挙げるなど、妻と向き合おうとする姿が浮き彫りに。
「定年を迎えた団塊世代以降の夫たちの意識が変わり始めたことで、『婦唱夫随』という新しい夫婦のカタチ、潮流が現れてきた、ということだと思います」(同)
苦境に立たされたことで「婦唱夫随」となった夫婦も。埼玉県川口市で、ベビーシッターの派遣や一時預かり保育などの子育て支援事業を展開する「コマーム」。社長の小松君恵さん(61)が40歳で起業した。