先日から始まったプロ野球の交流戦。今年から日程が変更されたが、この変更はチームや選手の今後に大きく関わると東尾修元監督は指摘する。

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 交流戦が始まって第1週が終わった。今年は昨年までの2連戦から、3連戦が2カード続く6連戦に日程が変わった。これは通常のリーグ戦と同じ日程だ。

 2→3連戦に試合が変わるのは、単に数字が変わるだけではなく、大きな意味合いを持つ。特に投手の起用に関しては首脳陣の考え方が変わる。今までのように2連戦、休日はさんで2連戦という形であれば、どんどん勝ち試合に投げる力ある投手を投入できる。連投したって2試合まで、だからだ。多少、層の薄いチームだって乗り切れる可能性がある。だが、6連戦となると、登板過多にするわけにはいかないから、先発投手の交代機も変わるし、救援陣も多くの投手が必要になる。先発ローテーションも、昨年は5人で回せたが、今年は6人立てる必要があるから、層の厚さが如実に出てくる。投手力のあるチームのほうが、安定した戦いが可能になる。

 DH制がないセの本拠地球場でのパ・リーグの起用法も大事だ。DHの選手が主力打者の場合、どこかポジションを探さなければいけない。西武は森を右翼で使った。捕手の炭谷の存在は大きいし、森の打力を生かすとしたら、それしかない。そして森を中心打者に育てたいと考えるなら、しっかりとポジションを与えたほうがいい。コンバートも含め、今後の球団方針を決める上でも重要な戦いとなる。

 今までDHで打撃に専念できていた部分で、不慣れな守備に気を取られるとなると、リズムが狂う可能性があるが、この交流戦の中で、自分のリズムを見つけてほしい。まだ19歳。長く野球をやるためにも、DHだけでは良くない。もし、リーグ戦のDHと変わらぬリズムで野球ができるなら、短期的に見ても、リーグ戦再開後に森の右翼起用というのは、オプションになる。

 森は交流戦開幕となった5月26日の巨人戦(郡山)で、巨人先発の菅野に3打席連続三振を喫した。菅野にいろんな球で牛耳られた。だが、翌27日の試合(東京ドーム)。大竹にまたも1打席目に三振を喫しながら、2打席目に粘って押し出し四球を選んだ。それだけ三振した後でも、タイミングが合わなくても、森の身上であるフルスイングができていたよ。しっかりと振ってファウルにする中で、大竹に“甘いコースにいったら打たれる”という心理で、力みを与えた。自分のスタイルで野球ができるかが、交流戦では特に大事だ。

 森にとっては初対戦の投手ばかりになる。セ・リーグの投手のほうが変化球を駆使して緩急を使ってくる。しかし、ストライクゾーンに来た球に対し、初球から自分のスイングを繰り出していくことだ。考えすぎて打撃を崩さないことだけを考えてほしい。今年は外角のストライクゾーンが若干広く感じる。ボールを見極めようと思ったら、追い込まれて後手に回ってしまう。自分の長所を押し出した形で打席に立てていれば、多少結果が出なくても、心配はいらないよ。

 あとは交流戦終了後からリーグ戦再開までの6月15~18日の4日間の休みをどう考えるか、だ。開幕から2カ月が経過し、投手陣に疲れがたまっている。交流戦最終週に「4日間あるから」と無理した起用をするか、逆にあえてゆったりと起用して投手陣に休息を与えるか。それだけでも、チーム事情が見える。

週刊朝日 2015年6月12日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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