漫画『ヘルプマン!! 介護蘇生編』が5月20日、小社から刊行された。24日に出版記念のトークイベントが開かれ、作者のくさか里樹さん(56)と、漫画の主人公・恩田百太郎のような介護の改革の旗手が登壇した。
漫画はフィクションだが、くさかさんは独自に取材を積み重ね、事実に基づいて描いている。小誌は、胃ろうの現状について検証する関連企画を展開し、物語をノンフィクションとして位置付ける。タイトルに「!」をもうひとつつけた理由がそこにある。
実際の介護現場で働く“ヘルプマン”たちも、百太郎と同様に明るく、ユーモアたっぷり。登壇した姿は一見、クリエーター風だが、介護の現状について問題提起されれば、深く切り込む。
介護事業所所長、飯塚裕久さん(39)は、現場から見た胃ろうについて口火を切った。
「私は認知症状をお持ちの方を中心に介護しています。一日でも長く暮らし続けるためのサポートをします。『胃ろう』をつけるかどうか考える前に、ご本人の『大切な誰かのために一日でも長く生きたい』という意思を介護職が知ることが大事だと思います。『一日でも長く生きたい』とおっしゃった人のために『胃ろう』を選んだこともありました」
特別養護老人ホーム施設長の杉本浩司さん(38)が続けて言う。
「僕が介護の現場で18年やってきて思うのは、がんばりすぎる家族がいること。ご家族が『まだがんばれます』とおっしゃったとしても、僕らから見ると背負いすぎ。今はどのステージにいるのか、話をしながらよく見極めるようにしています」
介護職の人の熱意があるからこそ、家族は救われる。しかし、介護職をとりまく環境は一向に改善しない。団塊世代が75歳以上になる「2025年問題」を目前に、待遇の悪さや高い離職率など課題は山積みだ。
「介護職は3K職場というイメージが先行していますが、介護の取材をする度に『こんなにクリエーティブな職はない』と、実感しています。ただ、現場で働く皆さんは、自分に必要以上の期待をかけすぎて、疲れがたまっているのではないか」(くさかさん)
介護には正解がない。達成感が得られず自分を責めている介護職の人が多いと、くさかさんは感じている。
施設のなかの人間関係だけではなく、よい介護を志す者同士が集えるように、外にネットワークをつくってほしいとアドバイスする。
「『こんな介護がしたい』と情報交換をすると、新しい化学反応が起きてくるんです。私はそういう情報を発信して、みんなが幸せになれるように『ヘルプマン』たちの『ヘルプマン』でありたい」(同)
※週刊朝日 2015年6月12日号より抜粋