『週刊朝日』の長友佐波子編集長が今を輝く女性にインタビューする「フロントランナー女子会」。今回はリンク・セオリー・ジャパンCo-COO(共同最高執行責任者)などを務めながら、今年1月にファーストリテイリンググループ執行役員となった原洋子(はら・ようこ)さんです。
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長友:役員になってのミッションは、何ですか?
原:ファーストリテイリングは、日本では販売職の地位が極めて高い企業だと思います。グループ全体がグローバルでもそうなるために、従業員全員に日本の小売の原理原則・風土を理解してもらい、グローバルに実行できるように徹底していこうと。
長友:セオリーで培った接客術をグループとして全世界に普及させるような?
原:そうですね。接客に関してはファーストリテイリングの中には、ユニクロとGUのセルフ型の販売方法と、セオリーやコトニエなど対面接客を重視する販売方法があります。価格など異なることはあっても、商売は同じです。コトニエの本社があるパリに月一で通って、現地の店舗の様子をこの目で確かめながら、店長、マネジャーとかいろんな部署の人と、もっとグローバルに発展するために何が必要かを話し合っていて。今まで文化や国民性の違いという思い込みで、見て見ぬふりをしてきた改善点にも目を向けているところです。
長友:『フランス人は10着しか服を持たない』なんて本がベストセラーになってますけど、文化や国民性の違いはありますよね? ベストな店舗も国によって違う気がしますが?
原:よく感性の違いとか、この国では着る・着ないって言うんですけど、私はそんなことはないと思っていて。販売は、ある程度科学できるんです。今年の流行色や、ファッションの売れ筋も発信される情報量で決まる。服って一年を52週に分けて統計を取っていくと、3月の何週は必ずジャケットの需要が高いとか数値化できるんです。そこを学び、学習すれば予測が立てられるし、準備ができます。準備ができるとお客様の需要に応えられるし、喜んでいただける。我々の共通の目的はお客様に喜んでいただくことで、そのためにも成長し続ける人材を作っていくことが必須なんです。
長友:作れるんだ。アパレルはセンス勝負の世界と思ってました。だからファッションが苦手な人間は気後れしちゃって、セオリーのお店の扉を開けるのにどれだけ勇気がいったか(笑)。
原:アハハ。センスとか個人の特殊能力だけでは継続ができない。どこのお店でも人が成長できる環境と仕組みが重要で。服やファッションが好きな人にとって、アパレルって自分の好きなことで人を喜ばせることができる、とても素敵な仕事なんですよね。でもせっかく好きで入った世界なのに、嫌いになってしまうことも。そうならないためにも、好きになること、科学を学ぶことが大事。好き嫌いじゃなくて数値化できるものがあると、「もっとこれを作らないと供給が間に合いません」とか本部を巻き込んで服作りに参加することもできます。実際、MD(マーチャンダイザー)とか生産に関わっていく人も多く、販売はマルチプレーヤーがたくさん育つ場ですね。
※週刊朝日 2015年5月1日号より抜粋