こう嘆くのは、参議院外交防衛委員会の質問に立った国際政治経済学者で、参議院議員の浜田和幸氏。日本は海外における情報収集力、分析力が劣っていると指摘する。
「2013年10月に設立を表明してから中国は、関係国に打診し、参加する約20カ国と内々で仮協定を結び、水面下で参加国の数を増やしていった。アメリカの猛反発は想定内で、日本もアメリカに同調すると中国は見ていた。アメリカと日本はそんな中国の動きはつゆ知らず、主要先進国はAIIBには参加しないとタカをくくっていたのです」
高速鉄道をはじめとするインフラ輸出をアベノミクス第3の矢“成長戦略”の柱に掲げる安倍政権にとって、中国がインフラ整備で主導権を握れば、日本企業への影響は計り知れない。
参加しなければ議決権、拒否権が与えられないことから、問題点がクリアされないままでも、ヨーロッパの主要国は参加を決断した。
そうしたなか、海外メディアからは「日本が参加する」といった報道が出た。3月31日付のイギリスの新聞「フィナンシャル・タイムズ」で、木寺昌人駐中国大使がインタビューで、「日本が将来的にAIIBに加入する可能性がある」と答えているのだ。
だが、浜田氏によると、外務省は「故意にゆがめられた」として正式にフィナンシャル・タイムズに抗議文を送ったという。
本誌が同省に事実確認すると、「フィナンシャル・タイムズ紙の報道については、在英国大使館からフィナンシャル・タイムズ社に対して、木寺駐中国大使がAIIB参加の見通しについて発言した事実はない旨申入れを行いました。同社とのやり取りのこれ以上の詳細を明らかにすることは、差し控えます」(報道課)との回答があった。
一体、何が起きているのか。浜田氏が言う。
「4月3日のチャイナ・デイリーにもフィナンシャル・タイムズの記事を引用する形で『日本は6月にAIIBに参加する方向で動いている』と書かれてしまった。それも、中国の情報戦術の一環だったのではないか」
※週刊朝日 2015年4月24日号より抜粋